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障害者雇用促進法は、障害者を幸せにしているか?

障害者雇用促進法とは?

簡単にいうと、企業の障害者雇用の義務についての法律です。
現在、民間企業では、常用労働者のうち、2.3%の人数の障害者の雇用が義務付けられています。
小数点以下は切り捨てになるので、常用労働者43.5人以上の企業が対象になります。
また、常用労働者の総数が100人を超える企業では、未達成一人につき、月額5万円の納付金を支払わなければなりません。

障害者雇用数と法定雇用率達成企業の比率

雇用が義務付けられている企業の障害者雇用数は、2012年度の約38万人から、2022年度には約61万人と約1.6倍に増えています。
一方、障害者雇用促進法で定められた法定雇用率の達成企業の割合は、46.8%から48.3%と、ほぼ横ばいです。
なぜ、雇用数は大幅に増えているのに、法定雇用率達成企業の比率はほとんど上がらないのか、それは法定雇用率が以下のように上昇しているからです。

1976年度1.5%
1988年度1.6%
1998年度1.8%
2013年度2.0%
2019年度2.2%
2021年度2.3%

2012年には1.8%だった法定雇用率が、約10年間で0.5ポイントも上昇しているため、企業からすると、法律を守るために雇っても雇っても、法定雇用率がどんどん上がっていくので追いつかない、というのが実情ではないでしょうか。
また、今後の改正予定は、2024年に2.4%、2026年に2.7%となっており、このような傾向は続くと思われます。

なぜ法定雇用率は上がり続けるか

日本が少子高齢化で財政が厳しくなる中、障害者については、福祉の利用から企業就労へ、つまり税金を使う側から払う側へ、そのため、法定雇用率をハイペースで上げて、企業就労を促進するためだと思われます。
だとしたら、法定雇用率は、これからも上がり続けるでしょう。

企業が法定雇用率を守ろうとする理由

これだけハイペースで法定雇用率が上がり続ける中、なぜ企業は守り続けようとするのか、その理由は以下にあると思われます。

法令遵守

日本の企業は基本的にまじめで、「法律は守らなければならない」ということから、純粋に障害者雇用に取り組んでいる一面があると思われます。

納付金支払いによる経済的負担

法定雇用率より大幅に不足している企業にとって、一人当たり月に5万円の納付金支払いの経済的な負担も、理由のひとつでしょう。

企業名公表の回避

3つの理由の中で、これが一番大きいのでは、と感覚的にですが思っています。行政指導にもかかわらず、法定雇用率の大幅未達が一定期間に改善されない企業は、その企業名が公表されます。日本の企業は世間体を大切にする風土があり、また企業のイメージダウンを避けるためにも、力を入れて取り組んでいるという側面を強く感じています。

障害者を幸せにしているか?

障害者雇用促進法のメリット、デメリット

上記のように、企業に対するノルマがどんどんきつくなり、また企業でも継続して障害者雇用に取り組み続けているという状況は、障害者にとっていいことづくめと思われるかもしれません。
しかしながら、もちろん、メリットもありますが、弊害と感じられることもあります。
メッリトとデメリットについて、以下にまとめてみたいと思います。

メリット

就労の機会が増える

もちろん、やりがいなどもとても大切ですが、現実的には生活がある中、まずはともかく働くことが最優先というケースも多くあり、雇用者数が増え続けていることはメリットといえると思います。

無理のない働き方ができる

企業からすると、法定雇用率達成のためには、障害のある人にはやめてほしくないわけですから、比較的負荷の低い業務を任せる傾向にあります。これも、そういった働き方を希望するに人にとっては、メリットといえると思います。

デメリット

賃金が低い

メリットと裏腹になりますが、負荷が低く、専門性が高くない業務は、相対的に賃金は低くなります。障害者雇用の給料は安い、と一般的に言われている一因です。

モチベーションの低下

これについてもメリットと裏腹になりますが、チャレンジしたい人にとっては、負荷の低い仕事しか任せてもらえないことは、モチベーションの低下につながります。

幸せに働けない根本原因

障害者雇用促進法に弊害があるとしたら、

法律を守らなければならない
→人数を確保するために、仕事のハードルを下げる
→モチベーションの低下

が、その根本原因と思われます。

もちろん、メリットのところにも書かせていただいた通り、障害者雇用促進法のおかげで救われている障害者も数多くいると思われますが、幸せを感じながら働けない人がいることも一方ではあると思われます。
では、多くの人が幸せに働くことができる方法は、あるのでしょうか。

幸せに働くために

働いていて幸せを感じることができない理由の一つとして、上記の通り、障害者雇用を「法律を守るため」に行っているということが挙げられるようです。
では、障害者雇用を「法律のため」に行うのではないとしたら、何のためでしょうか?
障害者を雇うと社員がやさしくなるとか、障害者のために仕事を切り出すことにより、仕事が整理されてほかの社員も働きやすくなるとか、いろいろなメリットを聞きます。
しかし、障害者を雇ったからと言って、必ずそうなるという保証はないかもしれません。
原始時代の人間にも、生きていくために仕事はありました。
家族に障害者が生まれた場合、狩りは無理でも、水を運ぶとか、木の実を集めるとか、掃除とか、できる仕事をやってもらって、皆協力し合って生きていたのかもしれません。
産業や経済が発展するにつれて、働く場では「労働生産性」で働く人を評価するようになり、障害者は排除されるようになりました。
だとしたら、排除された人たちを法律で働く場に戻す、という現在の取り組みの次の段階として、本来的なところに立ち帰る必要があると考えています。

中小企業家同友会の取り組み

私は、中小企業家同友会という経済団体に所属しています。
ここの特徴の一つとして、日本の経済団体として唯一障害者委員会があり、そこで障害者雇用について学んでいることが挙げられます。
会員は、従業員規模10~20人程度の企業の経営者が多く、そのほとんどが障害者雇用の法的義務はありません。
では、なぜ障害者雇用について学んでいるのでしょうか?
それは「人を生かす経営」という考えに基づき、大切な仲間として一緒に働くためです。
そのために必要なノウハウや心構えなどを、事例を報告しあってお互いに学んでいます。
また、世の中に広がっていくよう、情報の発信をおこなっており、その結果、日本のすべての企業が、このような考えに基づき障害者雇用を行ったとき、幸せな就労は現実のものになるでしょう。

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