精神障害の人が疲れやすい理由
障害の内容に関わらず、就労移行支援事業所を利用する方々がよく口にするキーワードが、「しんどい」「疲れた」「疲れ(だるさ)が取れない」です。
何故、精神障害や発達障害の方は疲れやすい(あるいは疲労が取れにくい)のでしょうか?
全ての精神障害・発達障害の方に当て嵌まる訳ではありませんが、主に以下のような理由が知られています。
理由① 疾患そのものの影響
精神障害をお持ちの方は、元来緊張しやすく、人前に出ることに不安を感じやすい傾向にあることが多いです。不安や緊張は体を強張らせたり、体のあちこちに不要な力がかかってしまったり、あるいは肩が凝ったり首筋や目の周りが痛くなったりすることがあります。
また統合失調症の方は、光や物音といった周囲の環境に敏感になることが知られています。これは発達障害の方の感覚過敏と同じで、些細な物音や光に脳が疲れてしまいます。
人間の「疲労」には、体の筋肉から生じる「末梢性疲労」と脳の疲れとも言われる「中枢性疲労」があります。中枢性疲労は、以前私がブログで取り上げたセロトニンなどの神経伝達物質と深い関りがあると言われているため、神経伝達物質のアンバランスさが見られる精神疾患の方の疲労に大きく影響することが予想されます。
理由② 薬の影響
精神障害を治療する過程で、殆どの方は薬を処方されると思います。抗うつ薬や抗不安薬、睡眠導入剤など様々な種類の薬が処方されるわけですが、当然全ての薬には副作用のリスクがあります。薬の作用も、処方される量や副作用の出方も人それぞれ異なりますので、人によっては認知機能と呼ばれる集中力や判断力が阻害されてしまうことがあります。脳の働きが邪魔されてしまうため、元気な時に普通にできていたことが上手くできなくなったり、何回もやり直しや繰り返しをしないとこなせなかったりすることが出てきます。そうなれば、いつもより多くのエネルギーを消耗してしまうため、疲れたと感じやすくなります。認知機能が阻害されるというのは、精神障害の方によく見られる症状の1つですが、薬以外にも病気そのもののせいで起こることもありますので、心配な時は主治医の先生に相談してみましょう。
理由③ 生活リズムの影響
過覚醒や緊張、過眠などで生活リズムが乱れると、昼間に強い眠気が出ることがあります。夜間にしっかり睡眠が取れることは、医学的に精神疾患からの回復にとても重要なことと見なされています。
規則正しい生活を、と病院や事業所でいつも、何度も繰り返し言われるのは、病気からの回復と、回復して落ち着いた体調をキープするために必要だからです。
トータルで睡眠時間を確保すれば良い訳ではなく、長過ぎる昼寝などの過眠は、返って体を疲れさせることが分かっています。体力回復や疲労軽減のために昼間に取る仮眠時間は、長くても20~30分程度が良いとされています。
それでも疲れが取れない時は?
①②③全てを意識しているのに、それでも疲れが取れない場合はどうしたら良いのでしょうか?
栄養ドリンク(エナジードリンク)で一時的に元気になるという方もおられるかもしれませんが、栄養ドリンクは高カフェイン・高糖度の飲み物でもあるため、習慣的に摂取すれば、返って自律神経を乱す可能性もあります。そうなれば、せっかく整い始めた体内時計が乱れる原因にもなってしまうかもしれません。
精神障害の方の疲労は、一朝一夕に改善するものではなく、ある程度中長期的に改善を目指していくものと考え、①②③の対策を継続することにまずは注力しましょう。そして不安な時は医師や薬剤師、福祉事業所のスタッフなど医療・福祉分野のプロに相談しながら、少しずつ「働ける体」に整えていきましょう。