障害者雇用をする企業の採用目的を知ることと、障害者雇用を目指す人が自分自身で考えなければならないこと
このスタッフブログでは、障害者雇用に必要なスキルやものの考え方について既に他のスタッフが多く書いているため、今回は求人を出す企業側から見た「障害者雇用」についてお話したいと思います。
就労移行支援事業所ペガサスでは、主に精神障害・発達障害者の方が、毎日を穏やかに過ごすため、書類選考や面接に通るため、あるいは企業で働き続けるためのスキルやものの考え方について随時プログラムで提供していますが、それと同時に「企業側の目的」を推測、考慮する必要があります。
障害者雇用の背景
2006年に精神障害者(精神保健福祉手帳所持者)も障害者雇用の対象になり、2016年には障害者差別禁止規定や合理的配慮の概念が導入され、2018年には精神障害者の雇用が義務化されました。就労を希望する精神・発達障害者にとっては、就労の機会が増えることになりました。
しかし、「障害者雇用を行う」という結果は同じでも、障害者雇用の目的は企業によって全く異なることもあります。それを予め理解しておくことで、自分の希望する働き方とマッチするかどうかを検討することができます。入社してから「思っていた働き方と違う(業務内容、人事評価、配慮、スキル・キャリアアップなど)」とならないためにも、応募前に是非理解して頂きたい大事な目的です。
障害者雇用の採用目的
まず、企業が障害者雇用を検討する際、その目的は主に次の4つのパターンが考えられます。
①「法定雇用率を達成するため(≒障害者雇用納付金を支払わないで済むよう)」に障害者雇用を行う。法令遵守の範囲内での限定雇用。収益を上げることを期待しない(勤怠が安定していれば良い)。
②自社の本業外で活躍してもらうための障害者雇用。社外向けのCSR(企業の社会的責任)、ダイバーシティやSDGsの一環として雇用する。収益を上げることを期待しない(勤怠が安定していれば良い)。
③自社業務に対し、業務効率化や生産性向上に貢献してもらうことを期待して、障害者雇用を行う。間接的な収益アップを期待して障害者雇用を行う(勤怠の安定は最低条件)。
④企業の本業・収益事業での活躍を期待して障害者雇用を行う。開発や営業部門など、まさに企業のメイン収益を上げるための部署や職務で、他の社員と同様に外に向かってサービスや商品を提供し、直接利益を上げることを期待されている。
採用する企業が考えていること
それぞれについて、もう少し具体的に説明します。
①「法令順守の範囲内で限定雇用」の場合は、本業とは関係性の薄い業務を任せられることも珍しくありません。例えば、納期にとらわれないオフィス業務(メール封入や郵便仕分け、オフィス内の清掃業務、企業の敷地内でのエクステリア設備や施設の管理補助業務(植栽や観葉植物手入れ)などです。
②「自社の本業外での就労」の場合は、原則本業とは無関係で、(本業と無関係な一次産業での雇用の場合、①と同じ「法令順守」が最大の目的になっています)CSV・CSRなど社会貢献活動に結びつけて展開している企業もあります。対外認知や企業のイメージアップ、ブランディング強化を狙いとします。(例:障害者が植物や野菜を育てて、その企業の社員食堂で提供されるなど)
③「自社業務に対し、本業サポートを期待して障害者雇用を行う」場合は、本業に貢献することを目的としますが、間接業務をまとめて障害者に任せることで、自社やグループ内の業務効率化や生産性向上を目的とします。(各部門の単純作業の請負、バックオフィス業務など)
④「自社の本業、収益事業で活躍してもらう」場合は、売上に貢献することを目的としています。利益の創出に直接関わっていく部署や職種に配属され、一般社員と同様の業務に取り組みます。しかし、この目的で働く障害者の層は就労福祉サービスを利用しないケースが多いとのことです。
自分が応募しようとしている企業が、障害者雇用に何を求めているのかを推測することで、求めている人材要件や、自分がその企業に入社した時、どのような働き方になるのかが想像できるようになってきます。
自分はどんな働き方をしたいのだろうか
ここで大切になるのが、改めて「自分はどんな働き方をしたいのだろうか」と自分自身で考えられるかどうかです。
もちろん、一人で全て考える必要はありませんが、スタッフとの面談やプログラムを通じて、自分自身の「どんな働き方をしたいのか」「何が譲れなくて、何なら妥協できるのか」「企業で働き続けられたらそれでいいのか、それともキャリアアップしたいのか」などを探り続けることが大切ということです。
これは時間の経過と共に、変わったり、強化したりすることがあります。
「企業で売り上げに貢献して、自分の力を発揮したい」と希望する方もいれば、
「仕事内容は問わないが、毎日決まった作業をコツコツするような仕事がしたい」という方もいらっしゃるでしょう。
あるいは、「とにかく近くて通いやすいことが最優先で、パソコンを使う仕事なら何でもOK」
「最前線で利益創出するほどの自信はないけれど、裏方として企業の利益に貢献していきたい」
「プライベートの時間を確保するのが最優先で、無理なく通勤できれば給与はこだわらない」
「その企業が作っている(提供している)製品やサービスが好きと思える企業で働きたい」
「最初はアルバイト(パート)社員でも良いが、その内正社員としてキャリアアップしたい」など、人それぞれ、様々な「理想の働き方」があることと思います。
上記は一例ですが、ここが明確になっていれば、ご自身の就職活動の方向性が見えやすくなるでしょう。
自分にとっての「理想の働き方」と、「企業の障害者雇用の目的」が合致すると、そこで長期的な就労定着などにも関わってくることでしょう。
「自分はどんな働き方をしたいのか?」と、「この企業は何のために障害者雇用をするのか?」という視点を持ってこそ、自分にどんな訓練が必要か、何を頑張って克服し、何を企業に配慮してもらうのかといった自己理解に繋がります。
自己理解について詳しく知りたい方は、是非関連記事をご覧頂くか、個別説明会にお申し込みをいただければと思います。