発達障害・精神障害の人が就職するのに、有利な資格ってありますか? ~就労移行支援事業所の役割~
【就労移行支援事業所と職業訓練所の違い】
例えばですが、就活中の精神障害・発達障害の人にとって、職業訓練所と就労移行支援事業所の違いは何かといいますと、職業訓練所は仕事をするための道具を磨くところ、就労移行支援事業所は自分にはどんな道具が必要なのかを探すところであり、また道具を使う力を身につけるところです。
今回は、そんな観点から、就労移行支援事業所とは何をするところなのかについて書いてみたいと思います。
【パソコンや資格は仕事をするための道具です】
以前、障害者専門の人材紹介会社を経営していたころ、求職者の人に「どんな仕事がしたいですか?」と尋ねると、「パソコンを使う仕事」という答えが返ってくることがありました。
それに対して、「パソコンは仕事をするための道具です。パソコンという道具を使ってどんな仕事がしたいですか?」と尋ねると答えに詰まってしまうケースもありました。
逆に、「就職に有利な資格は何ですか?」と問われることもあります。
今度はこちらが答えに詰まってしまいます。
資格は仕事をするためのいわば道具で、どんな仕事をするかによって必要な道具は決まります。
ですので、順番として、まずは、どんな仕事をしたいのかを明確にする必要があります。
そして、その仕事をするために必要な道具が決まります。
【なぜ最初に道具を気にしてしまうのか】
<やりたいことが明確でない>
最初に道具を気にしてしまうのは、何をやりたいのかが明確ではないからなのかもしれません。
何をやりたいかが明確であれば、自然とどんな道具が必要かは答えが出ますので、そもそもそういった質問も生まれないでしょう。
自分が何をやりたいか、何に向いているかは実際に仕事を経験することにより発見できるものですが、精神障害・発達障害の人の中には、その経験が少ない人もいます。
この課題を解決するために、ペガサスでは企業実習を活用しています。
こちらにつきましては、「就労移行支援とは?~ペガサスが精神障害者と発達障害者に特化している理由~ 」を参照ください。
<仕事をすることへの不安>
仕事をするということへの不安から、就職する前に、いい道具をそろえておきたいという気持ちになるのかもしれません。
特に発達障害・精神障害の人は、その傾向があるのかもしれません。
しかしながら、すべての仕事に役に立つ資格はないですし、世の中にあるすべての資格を取得することも不可能です。
この問題を解決するには、その不安を解消するしかありません。
その第一歩としては、何が不安なのかを明確にすることです。
そして、それを解決するためには何が必要かを考え、実行することです。
解決するためには、具体的な事実と向き合うこと以外に方法はありません。
ただ、それをひとりで行うことは容易ではありません。
そのお手伝いとしてのペガサスの取り組みについては、「就労移行支援とは?~ペガサスが精神障害者と発達障害者に特化している理由~ 」を参照ください。
【道具は、就職後に磨くこともできる】
<どんな道具を準備したらいいの?>
事務の仕事をやりたいのであれば、パソコンが使えることは必須です。
そして、スキルは高いに越したことはありません。
ただ事務の仕事といってもその幅は広く、高いスキルが必要な場合もあれば、基礎的なことができれば済む場合もあります。
ですので、募集要項に具体的に必要なパソコンの資格が明記してあればそれが必要なのは言うまでもありませんが、そうでなければ何をどこまで準備していいのかわかりません。
また、パソコンの機能は幅広くありますが、どの機能を使うかは、会社ごと、または同じ会社の中でも部署ごとに違います。
ですので、事務の仕事につく場合は、パソコンスキルは高いに越したことはありませんが、持っている上級レベルの資格が決定的な決め手になることは、あまりありません。
<道具そのものよりも、磨く力が必要>
では、何が重要なのでしょうか。
前述しました通り、例えばパソコンでいいますと、どの機能を使うかは職場によって違い、事前の準備ができないとなりますと、入ってから教えてもらうしかありません。
会社側が求めるのは、周囲から教えてもらうことのできる人です。
簡単に言いますと、コミュニケーション力となります。
ですので、雇用側が求めるのは、上級レベルのパソコンの資格よりも、コミュニケーション力なのです。
【コミュニケーションの問題を解決するために】
元来、発達障害・精神障害の人にとって、コミュニケーションは大きな課題の一つです。
そして、一言にコミュニケーション力といっても奥は深く、この問題を解決するには、二つの方法があります。
<自分自身で磨く>
コミュニケーション力向上のプログラムを受けるなどの方法が挙げられます。
ペガサスのプログラムにつきましては、「就労移行支援とは?~ペガサスが精神障害者と発達障害者に特化している理由~ 」を参照ください。
<周囲との相性を考慮する>
周囲と良好なコミュニケーションを取るには、もちろん自身の努力も大切ですが、現実的に合う人合わない人は存在します。
同じ対応をしてもスムーズに話が進む人と、まったく逆の結果になる人がいるということは、よくあることです。
人間である以上、相性は存在しますし、幸せに働く上では、一番大切な要素かもしれません。
特に、周囲の人的環境の影響を受けやすい、発達障害・精神障害の人はこの傾向が顕著かもしれません。
しかしこればかりは、実際一緒に仕事をしてみなければわかりません。
(面接では、お互いいいところだけを見せようとしますので)
この対策として、ペガサスでは企業実習の活用を考えています。
企業実習の活用につきましては、「就労移行支援とは?~ペガサスが精神障害者と発達障害者に特化している理由~ 」を参照ください。
<基本スキルは必要です>
教えてもらう力が必要と伝えてきましたが、もちろん、基本的なスキルは必要です。
基本的なことから教えてもらうことは迷惑となります。
専門的に深く知るよりも、浅く広く理解しておくと、応用が利いていいと思います。
【就労移行支援事業所と職業訓練所の違い】
以上のことから、就活中の発達障害・精神障害の人にとって、職業訓練所は仕事をするための道具を磨くところ、就労移行支援事業所は自分にはどんな道具が必要なのかを探すところであり、また道具を使う力を身につけるところです。
どちらを利用するかは、今のご自身にとって、どちらが必要かを考えた上で判断することをお勧めします。